質感で選ぶ着物-羽衣-

-羽衣という生地-

着物の話は、しばしば柄や色から始まります。けれど一枚が長く寄り添い、肌に静かになじむかどうかは、もっと深いところ――  一反の「質」で決まります。

YOSHIKIMONOが掲げてきた「伝統と革新の融合」
その輪郭は、声高な意匠ではなく、生地の奥にひそむ陰影として現れます。

羽衣とは

YOSHIKIMONOが多く用いるのは、羽衣。強い撚りをかけた糸で織る縮緬の一種で、表面にはシボと呼ばれる微細な凹凸が立ち上がります。右撚りと左撚りを交互に織り込み、湯をくぐらせると、糸が戻ろうとする力がそのまま質感になる。織りの技術が、生地のやわらかな表情として現れます。

光のやわらかな表情

光を当てると、凹凸はきらめきではなく、やわらかな拡散として現れます。反射は控えめに、光は布の内側へ沈み、呼吸のように立ち上がる。派手に主張せず、余韻だけが残る。羽衣には、そういう静けさがあります。

後から染める、という選択

この生地は白い糸のまま織り上げ、布になってから色を含ませていきます。糸を先に染めるほうが効率的だとしても、あえて後から染める。色が繊維の奥へやわらかく落ち、表面にとどまらないからです。シボの陰影と、奥に沈む色。その重なりが、空気感を生みます。

二度の「練り」

さらに「練り」の工程。生糸に含まれるセリシンを湯で落とし、糸と布をしなやかに整えていく作業です。羽衣は、先練りと後練り。二度、湯をくぐる。手に取ると、柔らかさの中にわずかな張りが残り、動きに遅れてついてくるような、静かな揺れをつくります。

軽さと透け

一反の重さは、およそ五百グラム。

袖を通すと薄く透け、下に重ねた長襦袢の色がうすく映る。透けることは、この生地の「表情」です。重ねた色までも、装いの一部になる。

軽さとシボのおかげで、単衣で仕立てても、袷で仕立てても、軽やかに着ることができます。重さで装うのではなく、空気で装う。

「着物は、最高の自己表現である」――この生地なら、その言葉を、多くの説明なしに実感していただけます。

現代の空間に、一反の絹を

東京ファッションウィークで発表したドレスキモノも、この質感から生まれました。着物のかたちはそのままに、振る舞いだけを現代へ。羽衣の軽さと透け感が、その動きを

ドレスキモノへ

東京ファッションウィークで発表したドレスキモノも、この質感から生まれました。着物のかたちはそのままに、着こなしは現代的に。羽衣の軽さと透け感が、ドレスのような動きのある装いを可能にしています。

YOSHIKIMONOがしてきたこと、これからしていくこと。そのすべての土台に、この一反の生地があります。